(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦
混沌とした巨大な世界空間の中から私たちが得ることのできる情報は、ケシ粒のように小さく、多くの場合、正確さにも欠ける。そのため、物事を軽々に断定的に判断することだけは控えたい。ウクライナで侵攻している痛ましい事態を受けとめる心構えにもそのことが言える。
ロシアも、ウクライナも、外国人の義勇兵を募っている。しかし、自国民以外の軍人に報酬を払って軍事行動に就かせることは、国連の「傭兵禁止条項」に抵触する惧れなしとは言い切れない。ウクライナの惨状を救う義務が私たちにはあるが、戦時下では不法行為が多用されるという悲しい現実から目を逸らしてはならない。
「傭兵の募集、使用、資金供与及び訓練を禁止する条約」が1989年12月4日に国際連合総会で採択された。しかし、現在に至るまで、米ソ両国はこの条約を批准していない。ウクライナ、ポーランド、ベラルーシは1990年に批准している。
どのような法律にも抜け道がある。この条約には、主権国家ではない民間軍事会社は対象外になっている。ウクライナには数多くの欧米の巨大軍事会社が従業員を派遣している。民間軍事会社は、1980年代末期から1990年代にかけて誕生し、2000年代の「対テロ戦争」で急成長した。これら会社に帰属する人たちがウクライナの前線の軍機業務に携わっている。その数は1万人を超えるという情報もある。
各国に向けての見事で精緻なゼレンスキー大統領の演説のスピーチライターには米国のPR会社の関与があるとも言われている。ウクライナ政府は3年前からこの会社と契約していたらしい。
2022.4