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地球儀 2022年10月1日から施行された労働者協同組合法

(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦

働く人たちが出資しあい、協同で事業を運営する「協同労働」が制度化されることになった。「労働者協同組合」(労協)は、非営利の法人で、①組合員が出資し、②組合員の意見を反映させて、③組合員自ら事業に従事することを基本原則にしている。議決権は、1人1票に限定されていて、組合員全員が対等な位置にある。労働者派遣事業を除くあらゆる分野の事業展開が可能であり、しかも、官庁の許認可は不要。3人以上で法務局で登記できる。現在活動しているNPO法人や企業組合は、いまから3年以内であれば「労協」に組織替えができる。


同法は、2020年の臨時国会で、衆参両院とも全会一致で可決、成立したものである。これまでのような、安定した会社で働くことに疑問を持つ若者たちが増えている。主体的に生きたいという彼らの願いも、いまのままでは満たされず、下手をすれば、単なるフリーターで青春を漫然と過ごし兼ねない危険性が彼らには付きまとう。


労協は、就職ではなく社会起業に関心を持つ若者の受け皿になる可能性を大いに秘めている。経済的な効率よりも働く者の納得感、当事者意識を労協はもたらす力を有するはずである。


ウクライナ危機や、偏りすぎた過度の近代化路線によって、日本の農林水産業は危険水域に達している。農地を蘇らせ、山林を再生させ、海を生き返らせることが日本の緊急の課題である。そのためには、若者の力が必要である。こうした課題に応える労協の出現が期待される。

2022.10

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