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地球儀 横暴さを強める花形経営陣

(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦

2020年の新型コロナウィルスの流行を契機に、FRB(米連邦準備制度理事会)による大幅な金融再緩和などで、M&A(企業の合併・買収)関連の企業の資金需要が旺盛になり、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった米国の投資銀行は関連する事業の手数料の上昇で、2021年12月期には空前の高収益を記録した。ゴールドマン・サックスは、直近の3年間で人員を1万人以上(3割弱)増やしていた。


ところが、2022年12月期には、FRBによる厳しい金融引き締めの煽りを受けて、世界の投資銀行は、2008年のリーマン・ショック以来の対前年比3割強もの手数料収入の減少に見舞われてしまった。ゴールドマン・サックスは、対前年比48%、モルガン・スタンレーも27%の減益を計上した。


減益に対処するために、米国の金融大手は、直近2か月で約7千人の雇用削減を実施した。ゴールドマン・サックスは2023年1月に3200人(全人員の約6%)、モルガン・スタンレーは1800人(約2%に相当)を削減した。


わずか2年の間に大幅な雇用増と人員削減が実施されたのである。


マイクロソフトは、2023年1月18日、3月までに1万人の人員を削減すると公表した。同社の従業員数は、2022年6月時点で22万1千人にのぼる。人員の半数は米国外で雇用されている。


2022年は、花形企業の詐欺的倒産が相次いだ年であった。壮大な物語をとくとくと語る起業家が持て囃され、巨大な見返りを期待する投資家たちが十分な検証なしに、これら起業家に融資し、そして騙され、従業員の首を切った。


各国の事情などは無視して、寡占的企業の経営陣の判断だけで大規模な人員削減が強行されるという時代に現在は入っている。


ユニコーンの輩出地であるシリコンバレーでは、こうした動きを見直す運動も盛んになってきたことが、まだしもの救いである。

2023.2

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