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地球儀 基礎的な科学なしの予言は危険である

(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦

1974年6月24日付『タイムズ』誌は、「新しい氷河期の到来」という記事で世界の人々に恐怖を植え付けた。


1975年4月28日付『ニューズウィーク』紙は、「地球は寒冷化に向かい農業に壊滅的な打撃を与える」とこれまたどぎつい表現で世界の話題をさらった。


日本でも寒冷化に関する本がベストセラーになっていた。例えば、和田英夫ほか『異常気象―天明異変は再来するか―」(講談社ブルーバックス、1965年第1刷、1981年第14刷)。根本順吉『氷河期が来る―異常気象が告げる人間の危機―」(光文社、1976年第1版、1976年第21版)。


こうした地球寒冷化を大騒ぎして危機感を煽る風情に対して、米国科学アカデミーが警告を発した。「私たち(研究者)は、気候変動に関する良質な定量的理解をまだ満足に得ていない。(にもかかわらず)、基礎的な理解を持たずに気候予測を確定的なものとして発言をする人がいる」(レポート「気候変動の理解に関して」1975年)。


ところが、それからわずか4年後の1979年、同アカデミーは「CO2と気候-科学的計量」と題するレポートで、「CO2が倍増すると、熱平衡が達成され、現実的なモデリングでは地上気温が2℃から3.5℃の温暖化が生じる。高緯度は特に影響されやすい」と断定的な見解を表明した。


しかし、実際に進行していることは、CO2排出量取引を口実にしたすさまじい金融ゲームである。


私の独断ではあるが、私は1975年のレポートの良心を高く評価している。


いつの間にか人々は、目立つ話題を探し、SNSで洪水のように同質の言葉を流すようになってしまった。

2023.3

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