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地球儀 氷が浮くという当たり前の事から

(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦

近年の気候の変動は異常という平板な表現で片付けられるものではない。地球的規模で何か深い所で大激震が起こっているのではないのか? 地球温暖化が犯人なので、温暖化の原因であるCO2を減少させれば異常事態は収まるという単純な考え方ですむ問題なのか? 欧米の豪雨、能登大地震、原因が究明されているのか?


私は、このコラムで過去3回にわたって「当たり前のこと」を深く掘り下げた3人の先人を持ち上げた。私たちは、目の前に横たわっている「当たり前」のことの重大な意味に関して無関心であり続けた。異常気象の理解がどこまで私たち素人に認識されているのかを、まず知りたい。


「凍る」とは、プラスイオン(水素)とマイナスイオン(酸素)との密着の度合いが強くなって、母体である海水に溶けないということである。氷は、水分にとって異物である塩分を外に出すことで重量を軽くする。水には塩分がある。それゆえに、氷に比べれば重い。だから、氷は沈まない。


塩分の濃度差によって海水は重さが異なる。つまり、軽い海水は表面に、重い海水は下層に位置する。そこに偏西風や貿易風が表面の海水を寒冷地に運ぶ、その地で低温化されて重くなった海水は下層に沈む。次々とこの作用が繰り返されることによって、深層流が、自分に比べれば相対的に温度の高い暖かい地域の深層水を表面に押し上げる。これが海水の循環である。


この循環は、「南北循環」(子午面循環、Meridional Overturning Circulation=MOC)と呼ばれ、北大西洋流域で典型的に見られる。「大西洋の」(Atlantic)を頭に付けて(AMOC)と呼称されている。


そのAMOCがわりと早い時期に停止して、ヨーロッパの寒冷化が始まるのではないかということが最近取り沙汰されるようになった(CNN、2023年7月26日)。

2024.3

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