(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦
「営農型太陽光発電=ソーラーシェアリング」(solar sharing)と「不耕起栽培」(nontillage cultivation)を組み合わせた「環境再生型農業」(regenerative agriculture)の試みが、新しい農業の世界を開拓しつつある。
私たちは、何世紀もの長い期間、土を耕す「耕起栽培」(tillage cultivation)を神域と理解し、他の方法があることをほぼ完全に無視してきた。
「耕す」という作業は、固く締まってしまった土を軟らかくすることに意義がある。耕すことによって、土中の通水性や通気性を改善することができる。除草効果もある。土の表面に付いている、前の栽培物の残りカス「残渣」や、雑草などを、耕しが、土の中に埋め込むことで、新たな雑草等の発芽を抑制し、次作の播種に備えることができる。
広い意味での耕作の効用の一つに、「乾土効果」というものがある。
土が乾燥したり、凍結して脱水されると、土の中に含まれていた有機成分の腐植が進む。この乾燥した土壌をふたたび湿らせるか、湛水状態にすると、乾燥を受けなかった場合に比べて盛んに微生物が働き腐植を分解する。その結果、アンモニア態窒素の生成量が著しく増加し、土の質がよくなる。この現象が乾土効果である。冬期に水田の土を掘り返して、よく乾燥させると水稲の生育がよくなることは、昔から経験的に知られていた。
ただ、この農法が長期にわたって大規模に展開されてしまうと、水質の限界に達して、土壌の乾燥化が進み、表面の土が流出する危険性が増す。それも確実にやってくる。原発依存に行き止まりがあることとそれは同じ論理である。
そうした隘路打開策の有力な一つが、「ソーラーシェアリング」(日光を分け合う)の土壌を不耕起栽培にする農法である。着手されてからまだ20年にも達していない。有望な試みとして暖かく支援したい。
2024.7