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地球儀 突然に個性を失った昨今のTV番組

(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦

最近、日本の地デジTVは、「本日のニュース」として2、3日前に放映した画像(解説も含めて)をそのまま流すことが多くなった。地方局の地域ニュースも同じである。地域の祭りを繰り返し再放送している。それだけではない。自社番組の紹介(放映中ではないもの)を執拗に流し、時間を大量に消費している。ここまでは我慢しよう。しかし、時代に切り込むべき新鮮なニュースの背景を、自らの足で取材していないのではないか?この点は許しがたい。話題性を高めるべく、各局とも同じ画像を流し続けている。事案の背景の事情を調べることなく、大手芸能社に所属する芸人を、どの局も同じようなシチュエーションで並べ、それにコメンテーターも加わって、自らが裁判官であるかのように、特定の人間を罵倒する。しかも、どのTV局も同じ表現の罵倒の仕方である。これでは、TV業界が率先して日本にファシズムを植え付けていることにならないのか。


齋藤元彦・兵庫県知事が、これら地デジ番組の標的にされ、「パワハラを冒した事実を認めろ」と責められている。しかし、その背景に関する報道はない。同知事が5期20年も続いた井戸敏三時代の負の遺産を払拭するとして、それまでの「県政推進室」を刷新したこととか、大規模な予算が組まれていた県庁舎の立て替え工事を突然に凍結したこととか、県職員の出勤日を4割に減らす方針を打ち出したこととかによって、県の職員に大きな戸惑いを起こさせた事情を取材した局はない。


私には、齋藤知事を断罪する積もりはない。せめてTV陣営が齋藤知事を個人攻撃をする前に、こうした事実を取材すべきであることを訴えたいのである。TV局こそ、他人からの「見聞」に頼り切ってはならないはずである。

2024.10

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