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地球儀 労働者協同組合を広めて絶望的な資産格差をなくそう

(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦

2024年5月28日、財務省が日本の対外資産の内容を発表した。日本は33年もの長い間にわたって、世界最大の「対外純資産国」の座を維持してきたというのである。対外純資産とは平たく言えば、外貨での日本の請求権のことである。その点だけを取り出せば、日本は世界最大の「お金持ち国」であると錯覚してしまいかねない(ただし、この数値は2023年末のもので、2024年3月末の数値になると、ドイツに抜かれて世界第2位になった)。テレビ番組の「ニュース」の放送時間が、各局とも短くなり、しかも、何日か前の映像とアナウンサーの台詞が何日か前のものと同じになっていることが増えた。それに対して、天気予報の時間が長くなった。ニュースと天気予報の後には、必ず、「現在の対ドル・円レートと日経株価平均」を各局ともに放映し、その報道時間が長くなっている。


「陰謀史観」は拒絶されるべきだが、それでも、各局が、足を揃えてお笑いタレントを使い、同じような内容の、しかも、品のない番組を延々と流す現状に、世界中がファシズムに染められていた時代を私は思い出さずにはおれない。ファシズムは、深刻な金融資産格差から生まれた。この一点だけは忘れられるべきではない。


おカネは、ナノ秒(10億分の1)単位で国境を越える。モノの世界はそうはいかない。グローバリズムの広がりとは、おカネだけのことにすぎない。


戦後の20年間は、世界の金融資産とモノを代表する世界のGDPとは同じ程度の規模であった。しかし、いまは、世界の金融資産は世界のGDPの240倍を超えている(World Bankの各年次の数値)。


10億ドル以上の金融資産を持つ「ビリオネア」は、1987年時点で、世界に140人しかいなかったが、2023年には2,500人を突破したのである(OXFAM, 2023)。


世界の上位10%の富裕層が、世界の金融資産の52%を保有し、下位50%の人々は8%にすぎないのである(『日本経済新聞』2021 年12 月27 日付)。


こうした理念をもって世界中にある「労働者協同組合」がやっと法的に認知されたのが2022年の10月であった。日本中に発展させていきたいものである。


非正規労働者や失業者は、生きる夢をなくしている。おカネは、利殖のために使われるべきものではない。働くすべての者の所有であり、働く場所を産みだすべきものである。

2023.2

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