(公社)国際経済労働研究所 所長 本山 美彦
米国のトランプ新政権が、各国に対して貿易戦争を仕掛けるのは確実である。1期目がそうであったし、これからの2期目は、そうした戦略がさらに強化されるであろう。そして、中国が最も敵視されている。中でもTikTok(ティック・トック)が主な攻撃対象である。前のバイデン政権の時でもそうであった。
2024年4月26日、(米国にとっての)外国の敵対的勢力(foreign adversary) によって運営されるSNSを禁止することを目的とした「外国敵対勢力に支配されたアプリから米国人を保護する法律」が成立した。条文には、特にTikTokが明記され、敵対国でない国に事業を売却することを求める個所がある。
当然、TikTokは法律の差し止め訴訟を起こしたが、米国の連邦高等裁判所は2024年12月6日、この上訴を棄却した。法律の施行予定日は2025年1月19日であった。以来、TikTokをめぐる報道が過熱気味となっている。
ここで、米国と中国のSNSユーザーの姿勢の違いを指摘しておこう。
米国のユーザーは、自己主張や、個人の日常生活を披露する傾向が強い。レストランの食事を写真入りで楽しげに語る内容が頻繁に見られる。個人批判も激しい。過激すぎる。これに嫌気を持つ米国人ユーザーは多い。
これに対して、中国のユーザーは、政府の厳しい監視にあることが逆に功を奏しているのか、地域とのつながりが重視され、人間関係の構築や維持のために、各種SNSを利用している(https://glohai.com/blog/5834)。
2025年1月6日時点での月間実際のSNS利用者数(単位:億人)で見る世界のランキング上位10社のうち、中国企業が5社を占めている。
中国企業以外の5社の利用者数90 億人に対して、中国の5社は40億人に利用されている(https://www.hottolink.co.jp/column/20250106_114872/)。
最近、米国のTikTok利用者たちが、「TikTok難民」というハッシュタグをつけて中国のSNSである小紅書(シャオホンシュ、英語名はない)に大量に流入している(https://forbesjapan.com/articles/detail/76483)。これは、中国のSNSの利用者に接近したい米国人が増えたことを意味する。TikTokを排除すればすむ問題ではない。
2025.2