第12章 「非常時」と運動の混迷(1931~33年)
第1節「満州」事変と労働運動、国家社会主義運動の分出 1 「満州」事変の影響 2 無産政党の動揺 3 国家社会主義新党の結成
第2節 国家大衆党・大日本生産党 1 国粋大衆党(1)国防社と雑誌『国防』(2)国粋大衆 党の活動(3)国粋航空連盟 2 大日本生産党
第3節 大阪府会議員選挙(1931年)・総選挙(32年) 1 大阪府会議員選挙(31年) 2 無産党議員の府会活動 3 総選挙 4 杉山元治郎代議士の議会活動
第4節 社会大衆党の結成とその運動 1 社会大衆党(社大党)の結成 2 1932年の活 動 3 1933年の活動
第5節 総同盟大阪連合会・社会民衆党 1 総同盟大阪連合会・社会民衆党 2 大阪金属労 働組合 3 大阪合同労働組合 4 シンガー・ミシン会社争議 5 関西紡績産業労働組合大阪支部連合会 6 逓友同友会・逓友自治会 7 電線工組合・大阪印刷出版労働組合 8 大阪海友同志会
第6節 官業労働総同盟 1 行政整理反対・共済組合年金獲得闘争など 2 大阪市従業員組合(大阪市従) 3 大阪煙草労働組合
第7節 全国労働組合同盟(全労) 1 日本労働倶楽部排撃派の分裂(1931年~12月の運動) 2 1932年の運動 3 1933年の運動
第8節 関西労働組合総連盟
第9節 日本労働組合総連合 1 総連合と新日本国民同盟(新国同) 2 大阪連合会 3反トーキー・劇場争議
第10節 関西民衆党・日本労働総連盟
第11節 日本交通労働総連盟(交総) 1 大阪市電気局従業員局闘同盟 2 大阪自動車従業員組合など
第12節 合法左翼労働運動 1 全国労働組合同盟日本労働倶楽部排撃分裂反対同盟(排同) 2 日本労働組合総評議会(総評議会)の活動 3 全労統1全国会議(統1会議)
第13節 「非常時」下の共産主義運動 1 8・26事件より熱海事件(32年1〇月末)まで (1)日本共産党・共産青年同盟(2)日本労働組合全国協議会 2 熱海事件後の再建
第14節 プロレタリア文化運動 1 日本プロレタリア文化連盟(コップ)大阪地方協議会 2 加盟諸団体の活動(1)演劇同盟(プロット)大阪支部(2)その他の団体
第15節 アナーキズム運動 1 分裂解消、全国労働組合自由連合会への再統1 2 各組合の動向 3 運動の消滅
第16節 メ―デ―・愛国勤労祭 1 メ―デ―(1932・33年) 2 愛国勤労祭(1933・34年)
第17節 1933年の市町村会議員選挙 1 この選挙の特徴 2 堺市会議員選挙 3 大阪市会議員選挙 4 無産党大阪市会議員の議会活動
第18節 泉州地方の労働運動 1 総同盟泉南地方協議会(1)大阪陶業労働組合(2)その他の組合の活動 2 その他の組合
第19節 農民運動 1 全農総本部派大阪府連合会 2 全国会議大阪府連合会
第20節 未組織労働者の労働争議、小作争議 1 1931(「満州」事変以降)~33年の労働争議(1)31年(「満州」事変以降)~32年の争議(2)1933年の主要争議 2 小作争議
第21節 部落解放同盟 1 高松地方裁判所差別糾弾闘争に拠る運動の活性化(1)全水大阪の衰退(2)大阪での差別裁判糾弾闘争 2 公道会の融和運動
第22節 その他の社会運動 1 消費組合運動(1)新設消費組合(2)消費組合の連帯活動 2 無産医療運動 3 学生運動(1)右翼学生運動の展開(2)学校紛争・左翼学生運動 4 婦人運動(1)無産婦人運 動・職業婦人団体(2)全関西婦人連合会の右傾化(3)国防婦人会(4)南地・芸妓のストライキ 5 住民運動(1)公害反対運動(2)小売商人の商権擁護運動(3)対市、受益者負担軽減要求運動
第13章 軍需インフレ下の運動の高揚と弾圧の激化(1934~37年)
第1節 日本労働総同盟大阪連合会 1 大阪連合会 2 大阪金属労働組合と大阪機械工作 所争議(1)大阪機械工作所争議(2)大阪金属労働組合の活動 3 大阪合同労働組合(1)大阪合同労組の活動(2)映画演劇同盟・全関西映画演劇同盟 4 関西紡績産業労働組合など(1)関西紡績産業労組(2)大阪市現業員同盟(3)逓友同志会・大阪逓信従業員会連合 5 日本港湾従業員組合大阪支部など
第2節 全国労働組合同盟(全労) 1 1934年の運動 2 港南地方全労・総同盟合同運 動と全日本労働総同盟の結成 3 日本労働組合会議大阪地方協議会 4 全労の1935 年の運動 5 全労の1936年の運動
第3節 官業労働運動と弾圧 1 官業労働総同盟の活動(1)大阪市従業員組合(2)向上会 2 日本労働総連盟の活動(1)総連盟映画従業員組合(2)その他の総連盟の運動 3 大阪官業労働組合の結成と崩壊
第4節 日本交通総連盟(交総)系組合の運動 1 大阪市電気局内戦線統1運動 2 私鉄労働者の動向 3 大阪自動車従業員組合
第5節 社会大衆党 1 1934年の活動 2 1935年の活動 3 1936年の活動 4 日本俸給者協会
第6節 日本労働組合全国評議会(全評) 1 全評の結成 2 総評議会・統1会議加盟組合の活動 3 全評関西地方評議会と35年の活動 4 大阪地方無産団体協議会 5 全評の1936年の活動 6 全評の1937年の活動と弾圧
第7節 泉州地方の労働運動 1 全日本労働総同盟 2 日本労働組合全国評議会(全評) 3 その他の組合
第8節 第15・16回メーデーとメーデーの禁止
第9節 大阪府会議員選挙(1935年)、総選挙(36年) 1 大阪府会議員選挙(1)無産 派の選挙選(2)無産党府会議員の議会活動 2 総選挙(36年)(1)選挙選(2)大阪選出社大党代議士の議会活動
第10節 共産主義運動 1 日本共産党関西地方委員会・党中央再建準備委員会 2 朝鮮人共産主義者の運動 3 日本労農救援会(労救)
第11節 国家社会主義・日本主義労働運動 1 日本労働同盟(1)労働同盟と政党問題(2)大阪連合会の活動(3)ゼネラル・モーターズ大阪工場での活動(4)臨時工解雇手当請求訴訟 2 日本労働組合総連合(総連合)(1)複雑な動向(2)大阪連合会の活動 3 日本労働祭・日本産業祭 4 その他の団体(1)神武会大阪支部(2)青年日本同盟大阪支部(3)日本産業軍大阪連合会
第12節 農民運動 1 全会派大阪府連の全国農民組合(全農)への復帰 2 34~37年前半の全農大阪府連の活動 3 皇国農民同盟(皇農)
第13節 未組織労働者の争議と府下の農村事情、小作争議の態様 1 労働争議(1934~37年)(1)1934年の主要争議(2)35年の主要争議(3)36年の主要争議(4)37年(日中戦争まで)の主要争議 2 府下の農村事情、小作争議の態様
第14節 部落解放運動 1 水平社運動 2 大阪府公道会
第15節 その他の社会運動 1 労働者教育運動(1)大阪労働学校(2)労働学院その他 2 無産者医療運動 3 消費組合運動 4 文化運動(1)新劇運動(2)児童演劇・人形劇運動(3)文学運動(4)思想運動(5)エスペラント運動5 住民運動(1)公害反対運動(2)大阪駅前区画整理立退き問題(3)関西大風水害対策要求運動(4)郊外電鉄踏切問題(5)百貨店進出反対運動
この時代、上述した大河内一男が1970年に著し た岩波新書『暗い谷間の労働運動:大正・昭和(戦 前)』で、社会労働運動の不遇時代として描いた時 期だが、大阪の社会労働運動はどうしてどうして多 彩で活発であった。例えば、第12章8節の関西労働 総連盟は小さいながらも在日朝鮮人労働者と被差 別部落出身労働者との連帯を戦前に運動目標とし て謳った数少ない組織である。また同章22節(4)の 南地・芸妓のストライキは、労働条件低下を迫られた 芸者衆が関西の聖山の一つ信貴山のお寺に籠っ て要求を実現した事例であり、こうした宗派を問わ ず宗教勢力と労働運動の繋がりは戦前大阪で頻 繁に見られた。さらに13章2節の港南地方全労・総 同盟合同運動と全日本労働総同盟の結成 六節 四の大阪地方無産団体協議会は、戦前日本におけ る反ファシズムの人民戦線結成に繋げようと大阪か ら動きが始まった事を示しており、大阪の社会労働 運動が地方運動の一つに留まらぬ影響力を持って いた多くの事例の一つだ。実際36年、7年、即ち戦 前の議会制民主主義が息を引き取る寸前の各種 選挙は、ファシズム勢力を含めてではあるが、労農勢 力が全国でも過去最高の成績を収めるが、大阪は 民政党を抜き第2党の地歩を築かんとする勢いを 誇った。他にも数多の瞠目すべき事象が綴られてお り、本書は小さな物語が繋がり支え合う大きな世界 の運動現地史として、是非とも一読を勧める。