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巻頭言 キーワードは「深い意味での楽しく、エンジョイ」

(公社)国際経済労働研究所 会長 古賀 伸明


明けましておめでとうございます。


健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。


厳しく難しくとも、お互いに輝きのある年にしたいものです。新たな年が、皆さまにとって実り多き年になりますよう心より祈念申し上げます。


「年改まり 人改まり 行くのみぞ」


俳人の高浜虚子の新年にあたっての有名な一句だ。一人ひとりが自らを新たにする心意気をもって、新しい年に向かう必要があると私は詠む。心したい。


私たちが過ごした2023年は、さまざまな出来事に彩られた年だった。新しい年への一歩を踏み出すためには、過去の経験から学ぶ必要もある。


2023年を振り返ると、ロシア・ウクライナ情勢や中東での新たな争いなど、海外情勢の緊迫度が増大した。新型コロナウイルス感染症は、5月に感染法上の位置づけが2類から5類に移行したことで行動制限が完全に撤廃され、外出機会の復活やインバウンド需要の拡大など個人消費を喚起する動きが活発化した。一方で、食品や生活必需品などの値上げにより生活に支障が続くなか、実質賃金は連続でマイナスを記録している。また、テクノロジーの進化が目覚ましい1年でもあった。チャットGPTをはじめとする人工知能、宇宙探索、再生可能エネルギーなど、科学技術は私たちの生活にさまざまな変化をもたらしている。気候変動や社会的課題といった問題も依然として存在している。


帝国データバンクは昨年、国内企業が注目する2024年のキーワードを発表した。1位は前年に続き「ロシア・ウクライナ情勢」だったが、「人手不足・人材確保」が10位から3位に浮上。物流業界などでドライバー不足が懸念される「2024年問題」も31位から7位に急上昇し、人材難への不安の高まりを反映した結果となった。2位は「物価(インフレ)」、4位はイスラエルとイスラム組織・ハマスの軍事衝突を踏まえ「中東情勢」が圏外からランクインした。


企業の経営課題が社会的課題と重なっていることを如実に表した結果となっている。


現在のさまざまな課題はその要因が複合しており、社会を支える担い手は、いうまでもなく、政治や行政のみならず、多くの集団・組織などのセクターがそれぞれの責任を果たすことが求められている。同時に、私たち一人ひとりも傍観者でいることは許されず、その役割やあり方が改めて問い直されている。


当然のことながら、新たな仕組みやシステムへの転換は、混乱も生ずることになる。それを乗り越え、あらゆる事象を従来のルールや枠組みの中で考えるのではなく、自らの知恵で新たな道を切り拓いていかなければならない。


未知な分野への踏み出しは、常に不安が付きまとう。しかし、同時に期待と喜びが待っているはずだし、それらを私たち自らが創っていく必要がある。未来は予測するものでも、一方的に迫ってくるものでもなく、まさに、未来は私たち自らが創り出していくものだ。


こんな時代のキーワードは「深い意味での楽しく、エンジョイ」である。


この極めて難しい環境の中でも、イキイキと輝いている人に多く出会う。よく言われるスポーツの世界のみならず、少し視野を広げれば、傍にもそんな人がたくさんいる。


その人たちに共通していることは、穏やかではあるけれども自分の足でしっかりと立ち、自分の目でものを見て、自分の手で触れたことを、エンジョイしていることだ。そして、本当にそうだろうかと前例や常識を疑う姿勢を忘れずに、感じたことを行動に移している。また、常に新しい風に吹かれてみたいという心をもち続け、そのひたむきな情熱が物事を好転させることを信じて疑わない人たちである。


困難を克服することを夢に置き換え、様々な課題を乗り越えることを自分のやりがいに変え、さらに、課題を解決していくプロセスを深い意味での楽しさ、エンジョイに変えていく新しい年にしたいものだ。

2024.1

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