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所員コラム 母のこと (藤原 加代子)

先日、およそ1年ぶりに実家に帰った。車を走らせて約1時間。それまで毎年、お盆と正月には子どもを連れて顔を見せていたのだが、ここ2、3年ですっかりそのサイクルが変わってしまった。新型コロナウィルス。仕事も生活も一変した。4回目のワクチン接種を終えてからと、今年の夏は遅めの時期の帰省になった。久しぶりに会った母の様子は相変わらずで、私の体のことばかり心配する。


小さいころは体が弱くてよく病院に連れて行ってもらった。苦労ばかりかけたと思う。スイミングを習い、体を鍛えた。バタフライも泳げるようになった。小学生の時は長期入院を2回。それで同級生とは修学旅行の思い出を作れなかったし、卒業アルバムの集合写真は“右上の人”になった。それでも寮のような入院生活は、今思い返せば密度の濃いドラマの脚本のような、貴重な体験として心の奥底に刻まれている。


成長して、普通の生活ができるようになり、こうして“働くことの幸せ”をかみしめることができる仕事に携わることができている。オルグという立場で日々いろいろな組織の方々に話を聞かせてもらい、自分たちにできることを提案し、共感してもらって、新たな世界をともに作る。


時には厳しい意見をぶつけられ悔しい思いをすることもあるが、そんな時こそ改善のチャンスだと前向きにとらえ、明日の糧にできた。ありがたいことだと思う。ここ1~2年は出張することもめっきり減ってしまい、オンラインでつながるという新たなスタイルで様々な人たちとやり取りをすることも多くなった。毎日とにかく忙しくしているし、母からすると私が何をしているのか、わからないのだと思う。


健康には人一倍気を使い、社交的で実年齢より若く見えるので、普段は感じないのだが、1年ぶりに直接会った母の背丈は、確実に小さくなっていた。


「今度、一緒に旅行に行こうよ。どこ行きたい?」――昼も夜もなく仕事にまい進し、63歳で亡くなった父とはできなかったことを、母とは絶対実現する。それを約束することが今回の帰省の目的だった。

オルグ部長 藤原 加代子

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