昨年(2022年)9月23日、高木郁朗先生(日本女子大学名誉教授)が逝去された。謹んでご冥福を申し上げたい。先生には弊誌でも大変お世話になり、私の仕事にも大きな影響を与えてくださった。今回の所員コラムは、ぜひ先生とのことを書いてみたい。
先生との出会いは2011年で、私がこの研究所に編集職として入所し、板東慧会長(役職は当時、現在は名誉顧問)から紹介され、市ヶ谷の事務所を訪ねたことが始まりである。いま振り返ると、恥ずかしいほど労働運動を理解できていなかったと思うが、囲碁盤をはさんで座り、たばこを片手にニコニコと話を聞いてくださった。
それ以来ほぼ毎年、弊誌の春闘関係の特集でご寄稿いただき、議論をリードしていただいた。原稿はどれも、労働運動や春闘を俯瞰し抜本的な提言がなされており、読者からも好評であった。かつて総評・社会党ブロックで活躍され、その後も長年労働運動に深くかかわってこられたからこそ書いていただけた内容だと思う。また、私自身、先生とのやりとりを通じて、労働運動や春闘の見方を育てていただいたと感じている。
先生の言葉は、厳しい内容であっても労働運動への“愛”にあふれていて、「労働運動や春闘が真に社会的な運動となり得るにはどうあるべきか?」「労働組合が(再び)力をもたないといけない」とよくおっしゃっていた。先生のお弟子さん(研究者)や労働運動の関係者の方々と一緒にお会いする こともあったが、皆さんからとても慕われておられ、自由にこれからの運動や連帯について議論されていたことも印象深い。
弊誌の2022年8月号には「『新しい資本主義』のもとでの春闘総括はどうあるべきか」をご寄稿いただいた。闘病中であった先生から「遺言のつもりで書いた」とうかがっていたが、本当に弊誌では先生の最後の記事となってしまった。まさに今、労働運動に必要な視点を提示いただいたと思う。改めて、多くの方に読んでいただければ幸いである。
理事・編集長 薗田 早織 |