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所員コラム 推し活と研究 (依藤 佳世)

今年度はまったく気合が入らない。理由はわかっている。“推し”が昨シーズンをもって引退してしまったのである。これまで楽しみにしていた週末が霞んで感じる。仕方ない。15年近く彼を応援してきた生活が変わってしまったのだから。


趣味・余暇活動が生活や人生にもたらす効果についての研究は、仕事をリタイヤした高齢者を対象としたものが多い。一方で、高齢者でない世代における効果はオタ活、腐女子研究など一部に焦点を当てたものが目立つ。趣味活動が勤労者のQOLを高める研究があまり注目されてこなかったのは、ワーク・ライフ・バランスと言いながらも、「ライフ」が指し示すものがほぼ「家庭」であったからだろう。晩婚化、生涯未婚者が増加していることを考えると、今後は勤労者の生活を豊かにするような趣味活動に関する研究がもっと増えてくることと思われる。


当研究所の第44回共同調査であるON・I・ON3における予備調査でも、第三領域(余暇・趣味、地域・社会)は幸福感や生きがい感に影響を及ぼすことを見出している。一般的にポジティヴなイメージのある趣味活動は、仕事にも家庭にもポジティヴな影響をもたらすが、一見ネガティヴな活動でもリフレッシュに役立っているといった具合である。


気合の入らなかった私だが、推し活仲間でもある研究者と、推し活が仕事においてポジティヴな影響をもたらしている、という話で盛り上がり、共同研究を進めることになった。推し活が仕事においてどのような影響をもたらしているのか明らかになれば、勤労者の第三領域活動の活性化に少しでも寄与できるだろう。良好な結果が明らかになれば、何よりも私自身に気合が入る。


“推し”は引退する前に私たちファンに、「早く次の応援したい人を見つけて、このカテゴリを好きでいて」と言った。まだ、当該カテゴリで応援できる人はいないが、彼の引退をきっかけに、異なる角度での推し活が始まったように思う。

研究員 依藤 佳世

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