私は研究所に入る以前、さる業界でサービス業をしていたが、コロナの影響をもろにうけた。問い合わせやクレームの電話がひっきりなしにかかってきて、かなり強い口調で詰められ数日間凹んだこともある。コロナが少し落ち着いた頃、客足が戻り、クレームを入れたお客様たちも再訪するようになった。期間中のこちらの苦労を労わってくれる人がほとんどで、電話での勢いとまるで正反対。常連の方が戻ったことは素直に嬉しかったが、正直なところ複雑な気持ちにもなった。この時は、実際に相手が目の前に立っているときにしかできない気遣いや理解があるのだろうと思った。
研究所で働きはじめた頃は、コロナの感染対策のためテレワークは浸透済みで、出勤しても自分しかいない日も多々あり、所員が五人以上そろうとちょっとした珍事だった。主なコミュニケーションツールはチャットか電話であるため、やわらかい印象になるような単語を選んでみたり、あえてちょっとだけふざけたりと、こちらが何をすれば相手はどのような反応をするのか自分なりの観察や工夫を続けて今に至る。誤解を与えたり、互いに違う認識のまま話が進んでしまうことも少なくないが、うまく分かり合えるときも勿論ある。
最近所内ではテレワークに関して生産性の低下やコミュニケーションの問題が懸念されていて、会議の議題にあがった。が、コミュニケーションについては、ここ数年の経験を経て、各々の心持ちや工夫次第で、案外会えなくても関係性は築けるのではなかろうかと私は思っている。大事なのは、相手の姿が見えていてもいなくても、向き合っている人の感情や様子に鈍感にならず、気遣うことや伝えることをサボらないことだという気がする。
自組織のテレワーク事情に限らず、クライアントをはじめ研究所に関わる皆さんとのやり取りでも、そうした丁寧さを忘れないようにしたいと思う。
管理員・事務員 武岡 歩