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Int'lecowk 2022年3月号(通巻1118号)特集概要

外国人労働者の社会的包摂を考える

Contents

日本における外国人労働者の現状と課題
金 明中( ニッセイ基礎研究所生活研究部 主任研究員)

〈インタビュー〉
活動を通じて考える、外国人労働者をとりまく問題と運動の可能性

鳥井 一平 氏(特定非営利活動法人 移住者と連帯するネットワーク 代表理事)

ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)推進の流れはますます加速し、政労使をあげて取むテーマとなっている。本誌においてもこれまで、2019年5・6月合併号「ダイバーシティの実現に向けて」で合理的配慮、性の多様性、2021年10月号で「大人の発達障害」など、関連する特集を企画してきた。本号では、このような流れも踏まえ、「外国人労働者の社会的包摂」をテーマに特集を企画した。


特集1は「日本における外国人労働者の現状と課題」として金 明中氏(ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)にご執筆いただいた。まず、日本における外国人労働者の現状、外国人労働者受け入れ拡大の背景を紹介し、2019年に新しく創設された在留資格(特定技能1号と2号)についても詳細に記述いただいている。今後の課題では、特定技能が拡大・定着していくと、日本ではより多くの外国人労働者が働くことになると思われる一方、外国人労働者がより安心して活躍できる社会を作るためには改善する点も多いと指摘する。具体的には、外国人労働者が働く労働条件の改善、外国人労働者に対する差別の問題の解決、悪質ブローカーを排除するためのより徹底した対策、制度をよりシンプルにして企業の負担を最小化する支援(公的支援の導入等)を挙げている。


特集2は、鳥井一平氏(移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事)へのインタビューである。鳥井氏は、全統一労働組合外国人労働者分会の結成を経て、1993年の外国人春闘を組織化し、以降の一連の長きにわたる外国人労働者サポート活動が評価され、2013年にアメリカ国務省より「人身売買と闘うヒーロー」として日本人で初めて選出、表彰されたという経歴をもつ。


今後の労働運動のあり方の一つとして、様々な団体等とのネットワーク・コラボレーションを通じて、社会においてさらなる存在感をもち得る運動を進めていくことが重要なのではないかという問題意識のもと、様々な活動を展開されてきた鳥井氏にインタビューを依頼した。外国人労働者のために労働組合が取り組んできた運動の歴史や、技能実習制度の問題点など外国人労働者の包摂を考えるにあたって理解しておくべき点について、詳しくお話をうかがっている。さらに、「外国人労働者」という視点にとどまらず、社会づくり・国づくりという観点から、移民・移住者の問題をどうとらえるかということにも言及いただいている。鳥井氏は、移民問題は、市民社会と労働組合が連携し合う大切な課題であり、民主主義を深める道筋として「労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会」であると述べている。今後の労働運動を考える上で重要なテーマといえるのではないだろうか。

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