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八木 隆一郎(国際経済労働研究所 専務理事・統括研究員)
新型コロナウイルス感染症流行前後の組合への積極的関与と活動評価の変化について
向井 有理子(国際経済労働研究所 研究員)
坪井 翔(国際経済労働研究所 研究員)
特別寄稿
山下 京(近畿大学経営学部 准教授・国際経済労働研究所 主査研究員)
(公社)国際経済労働研究所では、1955年以来、様々なテーマで共同調査を実施しており、2022年7月時点で54回を数える。その中でも、組織への参加関与と働きがいをテーマとする第30回共同調査「ON・I・ON2」は、1990年の開始以来、日本の代表的労働組合を中心に多くの労組の賛同を得て、参加組織数420組織、参加組織人員240万以上という大規模なプロジェクトとなっている。コロナ禍においてもON・I・ON2参加組織は増加しており、組合員の関与や働きがいがどのように変化したのかという問い合わせも多く寄せられるなど、ますます関心が高まっている。本号では、ON・I・ON2の最近の動向および、コロナ禍における組合員の意識の変化について特集する。
特集1は、八木 隆一郎 統括研究員による「最近のON・I・ON2の動向」である。最近の分析視点の一つとして社会関与と組合関与、会社関与の関係を挙げている。会社関与よりも組合関与の方が社会関与との相関が高く、組合への積極的な関与は社会関与のバロメーターとなっており、さらに会社の業績にも影響するとしている。また、「働きがい(ワーク・モティベーション)」に関連して、近年のエンゲイジメントサーベイの流行にも触れている。回答者が回答をコントロールできてしまう貢献意欲ではなく、貢献行動に至るプロセス指標が必要であるとの認識のもと、その開発にも着手している。これについては、本号の特別寄稿にて詳しく紹介している。
特集2、3は、2019年以前(新型コロナウイルス感染症流行前)に実施された調査と、2020年以降(新型コロナウイルス感染症流行以後)に実施された調査結果を比較している。特集2では、向井有理子研究員がコロナ禍での「組合への積極的関与と活動評価の変化」をテーマに執筆している。分析の結果、組合への関与という点では変化がみられず、コロナ禍が直接的な影響を及ぼしたとは考えにくいものの、組合評価に関してはやや高めるよう作用したと考えられるという結果が得られた。また、テレワーク導入率と組合関与との関連や、基本的労働条件など個別の9つの活動領域における意識の変化も確認している。
特集3では、坪井 翔研究員がコロナ禍での「組合員の働きがいの変化」について、同一組織における経年変化を集約し探索的な検討を行っている。分析の結果、コロナ禍後では職場の人間関係、労働条件といった外発的な要因に対する満足度は向上したが、働きがい自体の水準はコロナ禍前後で変化は見られなかった。その他の分析を加味しても、これらの外発的な要因の満足度の向上が、必ずしも働きがいには結びついていないことが示唆された。コロナ禍ではテレワークをはじめ、組合員の働き方や労働環境は大きく変化したが、働きがいそのものについては良くも悪くも安定していたと結論付けられている。
また特集1の紹介でも触れた通り、特別寄稿として、「ワーク・エンゲイジメントと働きがいの関係:概念の検討と整理」と題し、山下 京氏(近畿大学経営学部准教授・研究所主査研究員)に執筆いただいた。本稿では、近年「エンゲイジメント」の概念がビジネス分野で高い関心が寄せられ各種調査が行われているものの、解釈や測定方法が研究者や関係者の間で異なっている可能性を指摘し、実証データに基づいてワーク・エンゲイジメントの概念を整理・確認し、働きがいやワーク・モティベーションとの関係を検討することを目的としている。それにより、これまで研究所の共同調査で蓄積されてきた働きがい項目がワーク・エンゲイジメントとの関連においてどのような役割を担っているのかを明らかにしている。