本号の特集は、国際経済労働研究所の2022年総会記念講演の収録である。講演会は、2022年6月24日、オンラインにて開催された。「若者と運動をつなぐには」というテーマで、一般社団法人日本若者協議会(以下、JYC)の代表理事を務める室橋祐貴氏にご講演いただいた。JYCは、「若年層の意見を汲み取り、アドボカシーを通じて政策決定の場に若年層の意見を反映させ、若年層及び将来世代が生きやすい社会の実現に資すること」を目的に設立され、政策提言やメディア発信等、様々な取り組みを実践している団体である。
生活の不安定化や気候変動、各領域に残る差別など、これからの世界をよりよいものにしていく上での課題が山積するなか、社会運動体としての労働組合の役割はこれまでにも増して期待されている。一方、労働組合や労働運動が、若者に対して訴求力を失っているということも指摘もされている。このような状況から、労働運動には、若者の課題意識を吸い上げ、その課題へアプローチしていく場としての活性化が求められている。昨今、若者の意見を運動に反映しようとする取り組みが、連合をはじめとしてさまざまな組織でこれまで以上にみられるが、JYCの取り組みから労働運動に得られる示唆も多いのではないかと考え、今回の講演を企画した。
室橋氏による講演では、最初に、若者の政治参画の現状や課題を国際比較もまじえてお話しいただいた。アメリカ・スウェーデンと比較して、政治への関心度は大きく変わらないものの、政治参加や投票率は大きな違いがあり、「政治的有効性感覚」が乏しいことを大きな要因として指摘している。一方、変化の兆しもみられるとし、若年層で社会運動への参加意欲の高まりがみられること、身近な課題を中心に社会的な課題をもつ若者が多くなっていることなどが紹介されている。さらに、今後に向けた必要な取り組みについてもお話しいただき、その中で、重要な考え方としてロジャー・ハートの「子どもの参画のはしご」のモデルをご紹介いただいている。日本では、ほとんどの取り組みが子どもたちに影響力がなく、非参画型のものになってしまっていることを指摘し、影響力を子どもや若者に渡していくということが重要であるとしている。最後に、労働組合に期待する取り組みについてもお話しいただいた。
講演に続いて、実際にJYCで活動している2名の大学生(佐々木悠翔氏、壷井健智氏)にも参加いただき、パネルディスカッションを実施した。若者の当事者として、労働組合や運動にかんするイメージ、若年層が運動に参画するために必要だと思うことなどをお話しいただいた。