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Int'lecowk 2023年5/6月号(通巻1130号)特集概要

これからの労働運動への視点

(公社)国際経済労働研究所では2019年より、正会員組織の議案書を収集している。この企画の目的は、正会員組織の運動の全体像をつかみ、活動・方針等から新たな潮流や運動課題を把握し、様々な調査研究・提言に活かしていくことである。この分析は、企画を開始した当初から、早稲田大学の篠田徹教授よりアドバイスをいただきながら進めてきた。


昨年の同特集では、コロナ禍における労働運動に焦点を当てた分析をおこなっている。当時は現在と比べても対面での活動が制限されていた(あるいは自粛の判断が続いていた)状況で、オンラインによるコミュニケーションの普及の過渡期であったが、今年度でようやく対面での活動再開の兆しが見えたと思われる。また、昨年度のポイントに挙げている「新しい視点」のうち、とくに多様性・包摂に関する認識について今年度はより広範囲に波及している印象を受ける。今年度で方針に掲げる組織が増えたということ以外にも、より具体的なアクションとして推し進められていることが活動報告から確認できた。このような流れを踏まえ、今年は議案書からみえる今後の運動の方向性、およびこれまでも深くかかわっていただいている篠田教授による寄稿で、特集をおこなうこととした。


特集1は、今年の議案書の分析である。今回分析する議案書は2022年秋から冬にかけて収集したものであり、56組織からご提出いただいた。方針および活動報告から見出されたポイントは、1.ポストコロナを見据えた取り組み、2.近年の法改正を受けた取り組み(上記の多様性についてもこの中で触れている)、3.コーポレートガバナンスおよびコンプライアンスの取り組みの強化、4.組織強化の取り組みという4点が挙げられる。それぞれについて、社会的な流れや議案書の全体像を踏まえたうえで、特徴的な組織の事例も紹介している。また、ポストコロナを見据え、交流や社会的な活動が復活してきていることから、そのような取り組みについても考察している。


特集2は、篠田徹教授に「仕事と政治をつなぐ-ジョブ型時代における労働運動の政治的使命とは」と題して、議案書分析を踏まえ、これからの労働運動の方向性についてご提案いただいている。ぜひあわせてお読みいただきたい。


最後に、貴重な資料を提供してくださった組織の皆さまに、感謝申し上げます。

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