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Int'lecowk 2024年1月号(通巻1136号)特集概要

社会と労働の未来を語る

Contents

[座談会] 社会・労働の未来を語る
山田 久
久本 憲夫    
本山 美彦
ファシリテーター 古賀 伸明

(敬称略)

弊誌では長年、日本・世界における諸課題や今後の展望について、理事や研究者をまじえて議論する座談会を企画し、特集として新年号に掲載してきた。コロナ禍や、これまでファシリテーターを務めてきた板東慧前会長(現名誉顧問)の退任といった事情により、2022年と2023年は実施できなかったものの、今年はメンバーを改め、2年ぶりに座談会を実施した。参加者は、山田久氏(法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)、久本憲夫氏(京都橘大学経営学部教授/京都大学名誉教授/国際経済労働研究所 理事)、本山美彦氏(京都大学名誉教授/国際経済労働研究所所長)、古賀伸明氏(国際経済労働研究所会長)の4名である。


座談会では、1.問題提起・課題認識の共有、2.日本の生産性、価格転嫁、労働移動、3.人口減少局面における諸課題、4.2024春闘への期待と課題、5.連帯の必要性、といったテーマにもとづき、活発に議論がおこなわれた。


冒頭の問題提起では、古賀氏が、世界の紛争や複合的危機、国際秩序の崩壊などが、人びとの日々の暮らしにも大きな影響を与えていることを指摘した。本山氏からは、不安定な情勢のなかでも明るい光を見いだそうと、コロナ禍後のプラスの側面として、自然体で自分の生き方を実現していくという考え方が人びとのあいだで生まれつつあることへの期待が寄せられた。久本氏からは、気候変動と原発をめぐる問題が指摘され、さらに、民主主義国家と権威主義国家の関係の捉え方に注意すべきであるということが述べられた。そして、山田氏からは、国内外の動向や労使関係などについて、イデオロギーにとらわれずに“リアルに見ていく”ことの重要性が指摘された。


続いて、日本の生産性、価格転嫁、労働移動などをめぐる議論では、とくに中小企業における適正な価格転嫁について、生産性、政府による指針、企業戦略といった観点から議論が展開された。


人口減少が進む日本の課題についても、様々な意見が交わされた。高齢者を含む人材の活用に関して、本山氏を中心にそれぞれの参加者から言及された。古賀氏と山田氏は、年代を問わず多様性に富んだ人びとが活躍できる社会を構築していくことの大切さに言及された。久本氏は、働き方の問題を指摘し、性別役割分業意識や男性稼ぎ主モデルが日本の長時間労働を助長しているとし、労働時間をめぐるシステム自体を変えていく必要性を主張した。


また、2024春闘については、賃上げの重要性はもちろんのこと、初任賃金の引き上げや、最低賃金の取り組みで全体の底上げをはかる必要性が挙げられた。本山氏からは、労働組合の役割として、賃上げにとどまらず、経営に関わっていくことの重要性も提起された。


最後に、労働組合の役割・意義を再考し、運動として連帯していくことの重要性が示された。とくに、「第二の非正規」といわれるフリーランスの組織化について参加者の関心も高く、「労働者性」についてきちんと議論することや、従業員代表制をはじめ集団的労使関係のあり方を考えることなどが提言された。


座談会収録は2023年12月8日、弊所の東京連絡事務所と参加者の自宅をオンライン会議ツールでつなぎ、ハイブリッド形式でおこなわれた。

※2022年は、座談会はおこなっていないが、「日本の労働・社会の未来を語る」というテーマで寄稿いただいている。

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