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Int'lecowk 2024年8月号(通巻1142号)特集概要

日本の労働者意識の変遷

30年間のON・I・ON2調査から(後編)

Contents

1990年代から2020年代の働きがいの変遷
―共同意識調査「ON・I・ON2」調査結果より―
 坪井 翔、阿部 晋吾

1990年代から2020年代のジェンダー・ギャップの変遷
―共同意識調査「ON・I・ON2」調査結果より―
 鈴木 文子


ワーク・エンゲイジメントとモティベーションに関連する諸変数の関係 ―再調査の結果―

 山下 京

本特集は、(公社)国際経済労働研究所が実施する第30回共同調査「ON・I・ON2」に関する企画であり、前号(7月号)から続く後編である。1990年に発信されたON・I・ON2は、組織への参加関与と働きがいをテーマにした組合員意識調査であり、2024年時点で、日本の代表的労働組合を中心に約460組織、250万人以上が参画する大規模な調査となっている。ON・I・ON2についての詳細は、前号に掲載している、八木隆一郎統括研究員「ON・I・ON2の経緯と動向」(pp.5~8)をご参照いただきたい。

本特集では、1990年代以降の30年で蓄積されたON・I・ON2のデータをもとに、組合員の意識の変化を総合的に分析することを目的としている。前号には、向井有理子研究員・阿部晋吾研究員による「1990年代から2020年代の労働組合員意識の変遷-共同意識調査『ON・I・ON2』調査結果より-」を掲載した。今回収録している論稿でも同様に1990年代~ 2020年代のデータを使用し、労働者の働きがいの変遷、ジェンダー・ギャップの変遷にそれぞれ焦点を当てている。

特集1は、坪井翔・阿部晋吾研究員による「1990年代から2020年代の働きがいの変遷-共同意識調査『ON・I・ON2』調査結果より-」である。2022年にもコロナ禍前後の組合員の働きがいの変化を検討し弊誌に掲載したが(同年7月号・坪井研究員執筆)、今回はより広い時間的範囲を設定し、1990年代から2020年代までの組合員の働きがいとそれに関連する意識がどのように変化してきたのかについて考察している。

特集2は、鈴木文子研究員による「1990年代から2020年代のジェンダー・ギャップの変遷-共同意識調査『ON・I・ON2』調査結果より-」である。集団の男女差に注目し、1990年から現在までの30年間のデータを用いて、組合員を取り巻くジェンダー・ギャップの変遷を追っている。


また、特別寄稿として、山下京氏(近畿大学経営学部准教授・研究所主査研究員)による「モティベーションに関連する諸変数とワーク・エンゲイジメントの関係-再調査の結果-」を掲載している。この論稿は、弊誌の2022年7月号に掲載した同氏の「ワーク・エンゲイジメントと働きがいの関係:概念の検討と整理」の続編にあたる。2022年の分析では、ジョブ・インボルブメントおよび内発的ワーク・モティベーションは、ワーク・エンゲイジメントと概念的に近く、同じ因子を構成することが想定されたが、ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)の項目を用いて測定したところ、ワーク・エンゲイジメントは独立した1因子として抽出され、想定とは異なる結果となった。今回の論稿では、再調査をおこない、このUWESの強い因子的まとまりの理由を、先行研究を踏まえて検討している。これにより、ワーク・エンゲイジメントと内発的ワーク・モティベーションなどの類似する他の変数との関係についての詳細な理解の促進に寄与すると考えられる。こちらもあわせてお読みいただきたい。

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