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Int'lecowk 2024年10月号(通巻1144号)特集概要

2024春闘 成果と今後の課題(後編)

Contents

ジョブ型賃金制度、人的資本経営と春闘

山崎 憲(明治大学経営学部 准教授)


〈産別組織インタビュー〉

JAM
中井 寛哉 氏


基幹労連(日本基幹産業労働組合連合会)
石橋 学 氏


情報労連(情報産業労働組合連合会)
水野 和人 氏

本誌では、毎年定例的に春闘の成果と今後の課題を特集している。特集は前号(9月号)および本号の2号にわたる企画であり、本号はその後編である。


特集1は、山崎憲氏(明治大学経営学部准教授)より、「ジョブ型賃金制度、人的資本経営と春闘」と題してご執筆いただいた。今春闘の結果をふまえ、近年企業で導入が進んでおり、労使交渉に大きく関わる「ジョブ型賃金制度」と「人的資本経営」に焦点を当てながら、今後の春闘のあり方や労働組合が担うべき役割などについて提言いただいている。まず、現代の春闘で主流となっている平均賃金方式と、多くの日本企業で採用されている職能資格制度の関係を整理しており、職務遂行能力をもとに労働者を評価する職能資格制度のもとでは、個別賃金方式での賃上げは難しいことを指摘している。次に、戦後の日本企業の賃金制度に労働組合が関与してきた歴史を紐解きつつ、非正規労働者が年々増加するなかで、職能資格制度から、企業のミッションに合わせた役割を従業員に与える役割等級制度を経て、ジョブ型賃金制度へと賃金体系のあり方が変化していることを述べている。ジョブ型賃金制度への移行が進むことで、春闘交渉における労働組合の関与が難しくなっていること、賃下げを容認する交渉となる可能性もあること、リスキリングの名目で労働者が企業外に流出しうることを懸念している。加えて、経営側による人的資本経営の推進によって、労働組合が人事労務管理に一層関与しづらくなっていることも挙げられている。さいごに、労働組合への提言として、これまでのように労使が協力すればその果実が労働組合員、ひいては国民に広く供与された時代はこのまま何も対策を取らなければ終わってしまうと指摘したうえで、調査によって現状を把握し、それに基づいた労働組合の交渉力の在り方を模索しなければならないとしている。


特集2は、9月号に引き続き、産業別労働組合へのインタビューで構成した。今年は6組織にご協力いただき、本号ではJAM、基幹労連、情報労連(略称、組織規模順)の記事を掲載している。


前号には山田久氏(法政大学経営大学院教授)の論稿、UAゼンセン、電機連合、JP労組へのインタビュー記事、連合・仁平章氏による春闘の振り返りを収録しているので、ぜひあわせてお読みいただきたい。


本特集にあたって、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

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