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連合の人たちに、届くのであれば伝えたいこと ―2025春闘とナショナル・センターへの期待
熊沢 透(福島大学経済経営学類 教授)
〈インタビュー〉2025春季生活闘争方針
芳野 友子 氏(日本労働組合総連合会 会長)
春季生活闘争(以下、春闘)は、労働組合の諸活動のうち中心的なもののひとつに位置づけられる。その目的は賃金改善にとどまらず、労働者の生活保障や政策・制度の実現、社会的課題の解決など、すべての働く仲間のための運動として展開されてきた。
昨年の2024春闘では、1995年以来33年ぶりとなる5%台の賃上げが実現した一方で、物価高で個人消費の低迷が続いていること、中小と大手の企業規模間格差が拡大したことが課題であった。これらを受け、連合は、2025春闘において昨年に引き続き、賃上げ分3%以上、定昇相当分込みで5%以上とする賃上げ目標を設定し、社会全体へと賃上げの波及をはかろうとしている。とくに、中小組合における格差是正分の積極的な要求について方針に明示した点は、今春闘の特徴のひとつであるといえる。
このような春闘を取り巻く労働界の動向に着目し、弊誌の2月号では例年、春闘方針を取り上げている。今号は、福島大学経済経営学類教授の熊沢透氏による論稿と、連合会長・芳野友子氏へのインタビューを掲載している。
特集1は「連合の人たちに、届くのであれば伝えたいこと」と題し、熊沢氏にご執筆いただいた。まず、2025春闘で連合に期待することとして、賃上げのパターンセッターとしての役割を果たすこと、エッセンシャルワーカーの処遇改善に関して言及を続けることなどが述べられている。次に、賃金のあり方について、賃金の水準だけでなく、その「決まり方」と「上がり方」の重要性を指摘し、生計費保障の程度、査定による変動の程度、属人性と属職性の程度の3 軸からなる賃金体系(給与明細上の構成)の位置づけの考え方が紹介されている。また、労働組合にたいして、世の中の課題や言葉遣いに過剰なほど敏感であること、社会の課題を根源的(‘radical’)に考えることなど、運動の根本的な考え方についても期待と提言を述べている。
特集2は、連合会長の芳野氏へのインタビューである。連合では、2025春闘を「動き始めた賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に乗せる年」と位置づけ、働く人の持続的な生活向上をはかり、経済社会の新たなステージの定着をめざしていくとしている。また、「賃金と物価の好循環」を実現するカギとして「賃上げの広がりと格差是正」「適切な価格転嫁・適正取引の徹底、製品・サービスと労働の価値を高め認め合う取引慣行の醸成」が必要であることが聞かれた。2025春闘のポイントとなる持続的な賃上げ、格差是正に関する取り組みのほか、働き方の改善をはじめ、政労使会議の受け止めや新政権への期待などについてもお話しいただいている。