政治意識調査

組合員の政治参画を
促すための調査

労働運動にとって、働く者のための政策や制度を実現することは大きな目的であり、自分たちの代表を国政や地方政治の場に送りだすことはそのための重要な取り組みです。
しかし現在、「選挙前だけの動員では、組合員や社会から支持を得られる活動にならない」「政治活動の意義が組合員に伝わっていない」といった課題認識が共有されるようになってきました。
組合員の「政治の見え方」を構築し、行動を促す――そのために明日からでも取り組めることをともに見出していくのがこの共同調査です。

政治意識調査の3つの特長

  • 1「変えられる部分」に特化し、

    「これからのアクション」
    を見出すための「分析」

    次の選挙を含むこれからの政治活動に向けて、次のアクションを検討するためには、「組合員から政治や社会がどのように見えているのか」といったイメージの次元や、「労働組合が組合員と政治・社会との関わりをどう創出しているか」といった日常的な活動の次元まで立ち入ることが必要です。それらを踏まえ、単なる「集計」を超えた「分析」を行うことで、これからのアクションを定める手がかりを見出します。

  • 2地域・産業横断的な
    共同調査

    衆議院選挙は地方連合会を中心に、参議院選挙は産別組織・単組を中心に、全国規模で調査を行っています。こうした複数の組織が参加する横断的な調査により、他組織との比較を通じて自組織の特長を把握したり、地域や産業レベルでまとまった分析を行うことで単組の調査では把握できない傾向を掴んだりすることが可能となります。

  • 3研究プロジェクトとの
    連携による、
    設計と分析の
    ブラッシュアップ

    本共同調査は、研究所が主催する研究プロジェクトと連携しています。「労働組合と研究者の共同参画」という当研究所の研究プロジェクトの特色を活かし、実際の政治活動の中から生じた問題意識や疑問を取り入れながら、同時に専門的かつ最新の知見にもとづいて調査設計や分析を行うことを目指しています。

    研究プロジェクトへ

調査の活用方法

  • 選挙における投票行動を総括できる
  • 次の選挙に向けて、組合の活動をどう変えればいいのかの検討につながる
  • 地方選挙など、国政選挙以外の取り組みにもヒントを得られる
  • 選挙に限らず、日ごろからの政治活動全般の検討に役立つ

調査の流れ

調査のスケジュール 調査のスケジュール

近年の調査実績

  • 第53回共同調査(2019年参議院選挙)

    参加組織

    UAゼンセン、日本郵政グループ労働組合、ヤマハ労働組合連合会、阪急電鉄労働組合など
    調査参加人数約8万人

  • 第54回共同調査(2021年衆議院選挙)

    参加組織

    連合近畿ブロック、連合関東ブロック、日本郵政グループ労働組合
    調査参加人数約5万人

  • 第55回共同調査(2022年参議院選挙)

    参加組織

    UAゼンセン、日本郵政グループ労働組合、ヤマハ労働組合連合会、関西電力労働組合など
    調査参加人数約11万人

これまでの知見紹介

年代別の働きかけ調査のグラフ
過去一年の組合を通じた社会活動への参加の調査グラフ

「若い組合員は投票に行かない」…そんな声をよく耳にします。年齢層別に投票率を見ているだけでは、そこで溜め息をついて終わってしまいかねません。しかし、そうしたデータと「労働組合からの働きかけの有無」を掛け合わせてみると、全体としては投票率が低い若い組合であっても、働きかけを受けることで投票に行きやすくなっていることが分かります。
ここから2つのことが分かります。まず、組織内議員や推薦候補者を紹介するという「お馴染み」の政治活動は、ただ惰性で行われているものではなく、実際に投票を促す効果があるということ。第二に、労働組合の政治活動が若者の政治参加を促す役割を果たしていること。投票に行かない組合員のなかには、それぞれの候補者が「どんなことを訴えているのか」、あるいは「どんなひとなのか」といったことをそもそも知らない組合員も少なくありません。労働組合が組織内議員や推薦候補者を紹介することは、そんな組合員にたいして、少なくとも1つの選択肢を提示することに寄与しており、結果として組合員の政治参加を促すという公共的な役割を果たしていると考えられます。

「働きかけが重要とは言っても、政治の話をすること自体をタブー視する組合員も多い」という声も聞かれます。これは有権者一般においても深刻な問題で、そのような意識は一朝一夕で変化するものではないでしょう。しかし、私たちが政治との関わりを持つルートは、ダイレクトに政治について語ることだけではありません。
たとえば、労働組合を通じて社会活動(署名、ボランティアなど)に参加した経験がある組合員は、そうでない組合員に比べて、推薦候補者の応援に参加する率が高くなっています。注目したいのは、「選挙があれば必ず投票」に「そう思わない」と答える組合員、つまり政治そのものに必ずしも興味がない組合員でも、この効果が見られる点です。政治と関わる以前に社会と関わり、「自分にも何かできることがある」という実感を持つこと…これも政治への関わりを拓くルートの1つなのではないか、と考えています。