社会心理研究事業
産業・組織場面では「仕事を行ない報酬を得る」ということは自明のことであり,外発的報酬の顕現性が直接的に内発的動機づけの水準を低めるという現象は考えにくい。むしろ,仕事への動機づけ全体の中で外発的動機づけプロセスと内発的動機づけプロセスが相補的な関係にあることが予想される。すなわち,ワーク・モティベーション全体の中で,仕事の楽しさからの影響(内発的動機づけ)が弱い場合は,外発的報酬の影響(外発的動機づけ)が強くなるというような形で,認知的評価理論の予測は産業・組織場面において観察されるかもしれない。
そこで,各産業の65企業組織を単位として,内発的動機づけプロセスと外発的動機づけプロセスの相補的関係について検討を行った。各企業にはそれぞれ特有の風土を有しており,したがって,ワーク・モティベーションプロセスには違いがあると予想される。
各企業のワーク・モティベーションプロセスにおける内発的動機づけおよび外発的動機づけの影響度を,上図のようにプロットしたところ、逆相関の関係が見られ,相補的関係にあることが示された。したがって,認知的評価理論で予測された内発的動機づけと外発的動機づけプロセスの相補的関係は,産業・組織場面でも有効であるということが確認されたといえる。